江見水蔭から八重津先生に宛てた書簡と封筒
八重津家旧蔵資料は、八重津輝勝九州医学専門学校教授の蒐集によるものであり、ご子息である八重津洋平関西学院大学名誉教授・元大学図書館長によって大学図書館に寄贈された。近代の文学者・著名人の書簡と文学者の草稿および原稿からなり、すべてが自筆の資料である。この資料群は文学史的には3つに大別することができる。
第一に巌谷小波、泉斜汀、江見水蔭、上司小剣、前田曙山、山岸荷葉などの硯友社(けんゆうしゃ)系の文学者に関わる資料である。硯友社とは、明治18(1885)年2月に尾崎紅葉や山田美妙らが始めた文学者の集まりで、機関誌「我楽多文庫」を通じて大きく発展し、明治20年~30年代にかけて文壇の主流となったが、やがて自然主義文学の台頭により、多くの作家が進路を変え、筆を折ることになる。
第二に尾山篤二郎、高村光太郎、内藤鳴雪、林きむ子、前田夕暮、正富汪洋、三木露風などの近代の詩歌に関わる資料である。
第三に芥川龍之介、伊藤銀月、遅塚麗水、笹川臨風、真山青果など、その他の資料である。
これらの資料から近代の文学者たちの横顔や時代の光と影、文学の香気を感じ取っていただけると幸いである。
関連記事は、関西学院大学図書館報『時計台』No.69(2000年4月1日発行)を参照。
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