特別文庫
特別文庫一覧



トマス・ホッブズ著作文庫(Thomas Hobbes Collection)
トマス・ホッブズ(Hobbes, Thomas, 1588-1679)は17世紀イギリスを代表する思想家で、政治学者であり、イギリス経験論、近代自然法思想、社会契約説の代表者の一人である。ルネッサンス以来の近代哲学を背景に、物体論、人間論、市民論からなる哲学体系を構築した。トマス・ホッブズの著作の古版本は、極めて希少な存在である。というのは、彼の活躍した時代がピューリタン革命と王政復古の激動の時代にあったこと、また、出版による政治的迫害を恐れたことなどによる。本学図書館には、彼の主著『リヴァイアサン』(初版を含め17世紀に出版された7つの版)をはじめ、出版当時の反応を示す著作など貴重な資料が収蔵されている。(全174冊)



ジョン・ロック著作文庫(John Locke Collection)
ジョン・ロック(Locke, John, 1632-1704)は、17世紀イギリスを代表する政治思想家、哲学者であり、近代政治学と政治運動に多大な影響を与えた。特にイギリス経験論哲学および近代民主主義思想は著名である。ロックはイギリス名誉革命の代表的理論家であり、革命後は政府樹立の目的が人間の生命・自由・財産の保証にあること、またその目的から逸脱した政府に対する民衆の抵抗権を容認した。また、ロックの著作は政治論、経済論、宗教論、教育論と多岐にわたっているが、本学では、彼の代表的な著作『人間悟性論』(1690)などを含め、主な著作およびその各版、各国語版を収蔵しており、世界的に見てもこれほど充実したロックのコレクションは珍しいといえる。(全439冊)



アダム・スミス著作文庫(Adam Smith Collection)
経済学の創始者として名高いアダム・スミス(Smith, Adam, 1723-90)の著作は、『道徳感情論』(1759)、『国富論』(1776)、彼の死後友人によって出版された『哲学論文集』(1795)の3冊である。19世紀以降、経済学の諸学派はスミスを出発点として発展していった。スミス研究は膨大な蓄積を残しており、今日でもなお盛んである。この著作文庫には、彼の著作と、彼の著作に関する研究書が収蔵されている。特に有名な『国富論』に関しては、河上肇(1879-1946)の署名入りの初版(1776)をはじめ10版(1802)まで全て揃っており、各国語版も多く収蔵している。(全368冊)




ジェイムズおよびジョン・ステュアート・ミル著作文庫(James & John Stuart Mill Collection)
経済学の発展に大きな貢献を遺したイギリスの政治思想家ジェイムズ・ミル(Mill, James, 1773-1836)およびイギリス功利主義を代表する思想家ジョン・ステュアート・ミル(Mill, John Stuart, 1806-73)父子の著作と研究文献から成るコレクションである。ミル父子、特に息子のミルは古典派経済学を継承し、新しい時代の要請にこたえて、経済学に社会哲学を導入して経済学の再構築を図るとともに、新しい学問体系をめざした思想家である。思想と言論の自由の遵守、個性と個人的自由の尊重を説いた彼の著作は、現代的視点からその意義が今日でも高く評価されている。(全399冊)


スコットランド啓蒙コレクション(The Scottish Enlightenment Collection)
このコレクションは、アダム・スミス著作文庫と最も深く関連し、それを直接補う性格をもったコレクションである。18世紀スコットランド啓蒙における法・政治思想史、社会思想史、経済思想史だけでなく、哲学、倫理学、宗教、美学、文芸評論など幅広い蔵書構成になっている。その中に18世紀の貴重な古版本、19世紀のオリジナル本、また入手が困難な研究文献がある。本コレクションにはデイヴィッド・ヒューム、ケイムズを中心に、D.ステュアート、ロバートソン、ファーガスン、リード、ジェイムズ・ステュアート、ハチスンなど多くの思想家の著作が含まれている。(全948冊)




宗教改革・教会法コレクション(The Reformation and the Canon Law Collection)
本コレクションはドイツの宗教改革とそれ以後のプロテスタント教会法関係資料、そしてカトリック教会法関係資料をも併せたきわめて包括的な内容となっている。コレクションの特色として、その多くが貴重な古版本から成っていること、カトリック、プロテスタントを問わず、教会法関係の資料に重点が置かれていること、宗教改革期の貴重かつ豊富な資料や文献が含まれていることなどがあげられる。古版本の中にマルティン・ルター(Luther, Martin, 1483-1546)の小著書、講解、説教などがあり、これらはルター存命中の貴重な版本である。(全1,008冊)


イギリス社会政策コレクション(British Social Policy Collection)
イギリスの社会政策(貧困・慈善・公的給付)に関する法、政治、経済、社会に関連する歴史的実態と思想史資料のコレクションであり、1557年以降1909年までの文献を収集している。イギリスの社会政策の展開を知る上で欠かせない重要な文献から成っており、生活困難者に対する私的、公的救済をめぐる政治家、社会思想家、経済学者たちの論争を理解するための重要な資料を多く含んでいる。貴重な資料として貧民調査官のための「救貧法の手引き」(1601)などがある。また、スコットランドの救貧法関係の文献も充実していることがこのコレクションのすぐれた特徴の一つとなっている。(全487冊)



イギリス社会科学古典資料コレクション(Historical Social Science Literature Collection)
本コレクションは経済思想史・社会思想史上の多くの稀覯書を含む多様な著作およびパンフレット類から成り、若干のフランスの著作家の作品も含まれている。(16点)「スミス以前」の経済学史上の稀覯書には、重商主義経済学者であるペティ(Petty, William, Sir, 1623-87)の『アイルランドの政治的解剖』(1691)、カンティロン(Cantillon, Richard, 1697-1734)の『商業試論』(1755)などがあり、「スミス以後」では、ローダデイル(Lauderdale, James Maitland, 1759-1839)の『公富論』(1804)やマルサス(Malthus, Thomas Robert, 1766-1834)の『経済学原理』(1820)が含まれている。社会思想史上の稀覯書としては、フランス唯物論哲学者であるドルバック(Holbach, Paul Thiry, Baron d', 1723-89)の『道徳の支配』(1776)等興味深いものがある。(全440冊)



丹羽記念文庫 -近代短歌関係文献-
丹羽安喜子(1892-1960)は三重県津市出身で、1905(明治38)年に東京府立第三高等女学校を卒業し、1909(明治42)年に丹羽俊彦氏と結婚した。1919(大正8)年に与謝野鉄幹、晶子に師事し、新詩社の社友となった。1936(昭和11)年に第一歌集『芦屋より』を出版した。翌1937(昭和12)年に「芦屋短歌会」を主宰すると同時に、明治・大正・昭和初期に出版された近代短歌集のほとんどを初版の形で収集した。このコレクションは安喜子の夫で関西学院の財務部長・理事を務めた丹羽俊彦氏から1959(昭和34)年に寄贈された。
正岡子規によって創始された根岸短歌会と与謝野鉄幹・晶子によって創始された東京新詩社の流れは広大な近代短歌の世界を形成している。前者の流れを汲む写実主義短歌と後者の流れを汲む浪漫主義短歌は二つの大きな短歌世界の流れをなし、その中に多くの歌人を輩出している。これらの歌人達の歌集を多く集めた本文庫は近代短歌の研究者にとって必須の文献である。(全2,979点)



佐藤清文庫 -英文学関係文献-
佐藤清(1885-1960)は1910(明治43)年に東京帝国大学卒業後、1913(大正2)年にベーツ関西学院第4代院長に招かれ文学部教授に就任し、1923(大正12)年まで10年間在職した。1917(大正6)年には2年間イギリスに留学し、ロンドンのブリティッシュ・ミュージアムで英文学の研究をおこなった。関西学院の英文科は佐藤教授によってその基礎が築かれ、教え子には志賀勝、寿岳文章、由木康、岩橋武夫などが出ている。また、英文学会で活躍しただけでなく、詩人として多くの詩集をだすとともに、『関西文学』や『想苑』など、文学雑誌を起こし、編集者としても活躍した。特に当時、文学部の学生だったモダニズム詩人、竹中郁や、詩集『たんぽぽ』で知られる農民詩人の坂本遼、さらに足立巻一といった詩人・作家たちの輩出に貢献した。
本文庫は1962(昭和37)年度に受け入れた。英文学関係図書が中心であり、とりわけロマンティズム文学の中の詩を中心とした図書が多く収蔵されている。(全5,781冊)



柴田文庫 -イギリス社会思想史関係文献-
北野大吉(1896-1945)は、関西学院中学部卒業後、東京商科大学を経て1923(大正12)年に関西学院高等商業学部教授となり、経済史、社会政策などを担当した。1927(昭和2)年のイギリス留学中に同窓柴田享一<1892-1952、1916(大正5)年関西学院高等商業学部を卒業、1941(昭和16)年関西学院営繕課長、1951(昭和26)年関西学院大学学生課嘱託>の経済援助を受けて貴重な文献を収集した。これらの文献は1949(昭和24)年に柴田享一氏の了承のもと、本学図書館に寄贈されることとなった。
本文庫は、ロバート・オウエンの著作をはじめ、メアリ・ウォルストンクラフト、ウイリアム・モリスなど、イギリス産業革命期以後の社会思想・社会運動関係を中心に構成されている。(全318冊)


粟野文庫 -西洋古代史関係文献-
粟野頼之祐(1896-1970)は、青山学院高等部卒業後、米国に留学、碑文およびパピルス文書などの史料にもとづく古代ヘレニズム史の研究をおこなった。一時期ボストン美術館東洋部にも勤務した。帰国後、1951(昭和26)年文学部史学科開設に伴い本学文学部教授に就任した。1950(昭和25)年に『出土史料によるギリシャ史の研究』を刊行し、これによって1951(昭和26)年学士院賞を受賞した。
本文庫は、1972(昭和47)年の研究設備補助金により購入した資料にその後ご遺族から寄贈された資料を加え、文庫としてまとめたものである。その構成は西洋古代資料を中心とした2,076冊からなる古代ギリシャ、ローマ史関係の学術書で、研究上必要不可欠な文献がほとんど網羅されている。なかでも貴重なのは、碑文、パピルス文書の史料やヘレニズム史関係の図書である。また、古代史辞典、地図、雑誌とその抜刷、年表等、歴史学だけでなく言語学、教育学、キリスト教史の分野を含んでいるのが特色である。(全2,076冊)


赤井文庫 -西洋古代法制史関係文献-
赤井節(1925-1966)は、京都大学法学部卒業後、大阪市立大学法文学部助手、講師、助教授を務め、1959(昭和34)年本学助教授に就任した。1965(昭和40)年法学部教授となるが、翌1966(昭和41)年40歳で逝去。研究者として活動した期間は20年に満たないが、その業績はヘブライ法、ローマ法、フランス法、法思想史、西洋法史、方法論と多岐にわたる。
本文庫は1966(昭和41)年にご遺族から寄贈を受けたものであり、1945(昭和20)年から1965(昭和40)年に出版された洋書を主とし、ローマ法、旧約ユダヤ法、旧約聖書の研究書、古代中近東社会史、ヒブル語文法・辞書などの文献が含まれている。(全942冊)

堀文庫 -19世紀英仏社会思想史関係文献-
堀経夫(1896-1981)は京都帝国大学在学中、河上肇の影響で経済学史への関心を深めた。1923(大正12)年から1925(大正14)年までイギリスを中心に留学し、1934(昭和9)年新設の関西学院大学商経学部および法文学部講師となり経済原論を担当した。1954(昭和29)年に経済学部長となり、1955(昭和30)年から1966(昭和41)年の退職まで本学学長を歴任した。1966(昭和41)年に日本学士院会員となる。
1968(昭和43)年に購入した堀教授旧蔵の19世紀イギリスおよびフランス社会思想史関係の貴重書171点に、1982(昭和57)年にきみえ夫人から寄贈された資料を加え、本文庫としてまとめた。経済学史・社会思想史関係図書929冊からなる。洋書の大部分は19世紀イギリスおよびフランス社会思想史関係書から成っていて、柴田文庫と関連が深いものとなっている。和書と和雑誌とは、堀教授のもう一つの学界への貢献領域である明治経済思想史関係のものが中心である。(全1,177冊)


小宮文庫 -近代ドイツ経営学関係文献-
小宮孝(1902-1975)は、1929(昭和4)年東京商科大学卒業後、関西学院高等商業学部経済学担当教授に就任した。1950(昭和25)年から4年間経済学部長を務めた。戦後の学院民主化とキリスト教活動活性化の中核としても活躍し、1958(昭和33)年から1969(昭和44)年まで院長(第9代)、学長代理を兼任後退職。1974(昭和49)年には吉岡美国、C.J.L. ベーツに続いて名誉院長の称号を受けた。
1976(昭和51)年に小宮教授から寄贈された図書844冊のうち、歴史学派、全体主義経済学系統の学者(シェフレ、シュパン、ゴットルほか)の国民経済学、社会学、価値論などの著作を主体とした近代ドイツ経済学関係文献247冊を本文庫として指定した。(全247冊)


高坂文庫 -哲学・教育学関係文献-
高坂正顕(1900-1969)は、1923(大正12)年京都帝国大学文学部卒業後、京都帝国大学教授等を経て1951(昭和26)年関西学院大学文学部教授となった。西田幾多郎門下の哲学者であり、1964(昭和39)年7月、ハワイ大学で開催された『東西哲学者会議』に出席した。同年中央教育審議会特別委員会の主査に任命された。
本文庫は、1970(昭和45)年度の研究設備補助金により購入したもので、ドイツを中心とする近世・近代の哲学および歴史図書を中心とした2,114冊から成る。その中にはアメリカの大学論を主とする教育関係図書・資料が含まれている。主として1920から30年代、1950から60年代にかけて出版された図書が多いが、哲学・歴史書中には1900年以前に出版の図書も含まれる。(全2,111冊)



室井文庫 -キリシタン関係文献-
室井庄四郎(1893-1962)は、1914(大正3)年宮城県師範学校二部を卒業後、同年4月宮城県柴田郡大河原小学校に就職。1915(大正4)年宮城県立師範学校に就職。1939(昭和14)年神戸市立盲学校初代校長となる。1948(昭和23)年大阪市立盲学校長を務め、1957(昭和32)年停年退職。同年4月、日本ライトハウス総務に就任した。障害者教育に献身した教育家である。
本文庫は1963(昭和38)年に室井氏収集のキリシタン関係文献574冊を購入したものである。
また、本文庫は幕末から明治初年にかけての排邪書とオリジナル版を含む日本語訳聖書、摂・河・泉の宗門改帳・寺請帳などからなる92冊の和装本に加えて、大正から昭和戦前刊行のキリシタン関係、日本キリスト教史、南蛮文化関係の図書も含まれている。(全573冊)

梅田文庫 -東欧諸国関係文献-
梅田良忠(1900-1961)は、ポーランドのワルシャワ大学に学び、卒業後同大学で日本文化を紹介するかたわらポーランド文化を研究した。帰国後は本学文学部教授(1955-1961)として史学科で東欧史を講義し、その間に東欧文化の研究と紹介に寄与した。
1962(昭和37)年度に梅田教授が収集した洋書を購入し、これにギリシャ正教聖フランチェスコ修道院から寄贈を受けたポーランド語の宗教書などを追加した。
本文庫は、バルカン諸国に旧ソ連、ポーランド、ハンガリー、旧チェコスロヴァキアを加えた東欧諸国の歴史と文明に関する資料1,699冊からなる。貴重な大著や史料集、辞典、百科事典、学会誌から教養書や広報誌まで幅広く、また、地域的なまとまりをもって収集されている。(全1,699冊)