酒造りの工程の内、もろみを圧搾して清酒を絞り出す工程が描かれている。史料の右下部をみると、もろみ仕込みしたものを蔵人たちが酒袋に詰めている様子がみてとれる。中央部にはもろみを絞る道具である酒槽(さかふね)が描かれている。これには酒袋が300~500枚入り、男柱におもりとして多数の掛石を用いて絞る。ふんどし姿の蔵人たちがぶら下がっているのが、この掛石である。そして酒槽(さかふね)からは流れ落ちる清酒が描かれている。
また、この図に描かれた酒樽には「※」と「■」印が描かれているが、これは前出の澤之鶴引札の酒樽に描かれている印と同じものである。これらの印は「澤之鶴」の商標であり、この史料も「澤之鶴」が絵師に依頼した引札の下絵であるとみなされる。